昔の建物は、構造と意匠とだけから成り立っていたといっても言い過ぎではありませんでした。
もちろんそうした時代にも、現在の設備に相当するものがまったくなかった訳ではありません。囲炉裏とか井戸とか、行灯とか言ったようなものがそれにあたりますが、それらはいずれも孤立した存在でしかなく、現在の設備とはまったく質を異にするものでした。
 現代の設備はすべてそれ自体で完結した一つのシステムを構成しているものであり、いろいろなエネルギーによって動かされ、日夜絶えまなく動きつづけています。従って、建物の他の部分とは耐用年数も違ってきます。建物はまだ使えるが、設備が古くなったために改造が必要になるというケースはしばしばあるものです。今後、設備が進歩していくことは必然ですから、こうした現象は益々頻繁におこってくるに違いありません。
 このように設備というものは、建築の他の部分とは全く性質を異にする生きものであり、また独立したシステムであって、技術的にも建築技術とはまったく違う専門技術体系に属するものです。